私は、元来、物を購入するとき、自分が好きなものだけを選び続ける傾向にある。
これが、顕著なのが、食べ物。
新作だとか、期間限定、ちょっと変わったものに手を出すことは、ほぼしない。
要は、融通のきかない頑固者なのだ。
そんな頑固者が、昨年から『群馬名月』というリンゴを買うようになった。
私のなかで、リンゴといえば、ふじとか、つがる、紅玉。
横文字のジョナゴールドは、私にとっては新顔という認識。
そして、果物の甘いということは、色が赤いこと。
『赤い=甘い』これを、ずっとずっと信じてきた。
ところがどっこい、この群馬名月の色は、黄色いのだ。
じゃあ、何故に、群馬名月なんていう、異色の超新人を選んだかといえば、全くたいしたことはない。
我が家の御用達安売りスーパーで、一緒にきていた小6娘に
「あなたが食べたい果物を、何か選んできて」
と言ったら、娘が持ってきたから。
「選んできて」
と、物わかりのいい母親ぶって格好つけた手前、今さら
「これはダメだ、変えてこい」
とは言えなかった。
娘も
「みて!値段も、他のリンゴと同じくらいだよ!高くないよ」
「すごく甘いって、値札のところに書いてあったよ」
と、私の説得にとりかかる。
確かに、このスーパーの、特に果物は優れており、ハズレたことがない。
数秒、カートのなかのリンゴをみながら、長年信じてきた己の理論と、娘を前にした親の見栄を天秤にかけた末、見栄が勝った。
まぁ、ダメなら、砂糖と一緒に煮たり、ジュースにでもするかぁと思いながら。
ところが、これが大当たり。
黄色い=酸っぱいという、私の偏見は、黄色い皮をむいてしまえば、同じリンゴ。
そして、口にいれると、えもいわれぬ甘さと、ベストなシャキシャキ感。
一発で私の心を動かし、家族の心もわしづかみにし、昨年は何度となく購入。
そして、先日、今年初の、群馬名月を購入。
ちょっと台所にそのままにしておいたら、小6娘が皮をむいてくれた。
彼女は、この母親を待っていたら、いつ食べられるか分かったもんじゃないというのを、経験上、知っている。
「包丁で皮をむいたの?」
と、娘に尋ねたら、ピーラーで剥いたと。
『リンゴの皮は包丁でむくもの』
という私の勝手な古い理論を、またしても、軽々と、娘は飛び越えた。