私は、長いこと「めんつゆ」を甘く見ていた。
我が家の「めんつゆ」の使用頻度は、きわめて低かった。
めんつゆの出番は、素麺など、冷たい麵のつけ汁に使うときのみ。
ママ友や、世間のレシピブログで
「味付けは、めんつゆだけでOK!」
などと言うものたちを、私は腹の中で笑っていた。
簡単なめんつゆの基本成分は、醤油と酒とみりん、そこに顆粒だしを入れたもの。
醤油と酒とみりん、顆粒だしも買ったうえに、子供のいる家族なら1L前後のめんつゆを買う人が多い。
買って帰れば軽くはない、そんなものを、なぜに買うのだ?必要なのだ??・・と。
だが、少し前から、我が家の冷蔵庫には、必ず、めんつゆ がある。
それも、1.5Lのもの。
冷蔵庫内で、もっとも幅をとり、かつ、もっとも使用頻度が高い。
別に、希少価値の高いめんつゆではない。
どこのスーパーや、コンビニにも必ずある商品のもの。
めんつゆは、奇跡である。
これを入れただけで、味が決まる。
初めて、その奇跡に触れたのは、親子丼を作ったとき。
育ち盛りという名の大食漢3頭の怪獣が空腹で吠えるなか、えぇい!ままよ!と、めんつゆを放り込んだ。
いつもより早く、おいしく仕上がった。
なんてことだ。
何故に、もっと早くに気づけなかったのか?私!
そうやって、使ってみると、めんつゆは、煮物・焼き物・汁物・サラダ・漬物・・・何にでも、はまる。
あれだけ蔑んでいたものを、今は頬ずりせんばかりの溺愛っぷり。
でも、だが、しかしながら、物価が高い。
いつも1本予備に買っておく、めんつゆが、さきほど、栓を開けられ、予備がなくなった。
毎度、無駄な時間と知りながら、1.5Lのめんつゆの置かれた店の棚の前で、しばし悩む。
こうやって、めんつゆを買うことで楽を覚え、数回の動作を省略することで、身体も脳も衰えのスピードが速まるのではないか。
こうやって、めんつゆを買うことで、たかだか数百円と高を括ったことで、我が家の金のなくなるスピードが速まるのではないか。
めんつゆコーナーで、立ち止まっている人がいたら、そんなケチなことを考えている、私かもしれないので、見て見ぬふりをしてくださると有難い。