まだ、小5息子が、私の実家にいたときの話。
その日は、以前から息子が大好きな、戦隊モノの映画を、2人で観に行く日。
息子の本拠地は変わったものの、父の病院へ面会に行くのに、母も一緒だったので、母の送迎時、ちょくちょく息子とは顔は会わせていた。
それでも、久しぶりの息子と2人の時間。
前日から、何となくウキウキしている自分がいる。
いつも通り、息子の好きな音楽を車内にかけて映画館へ向かい、息子が飲み物を買って、チケットを入り口で見せて、中へ。
そしていつも通り、となりの席の息子に
「映画、終わったよ」
と肩を叩かれ、私は、失神から意識を取り戻した。
「お昼ごはん、どこかで食べる?」
と、息子に尋ねると、最初は首をふったが、まもなく
「えっとぉ…やっぱり食べたいかも…」
向かいあった食事の席で、映画の感想を聞くと
「超~良かった!!これは、スクリーンでみて正解!!」
と、興奮しながら語ってくれた。
だが、失神していたし、予備知識も皆無な私には、サッパリ分からなかったけれど、息子の語りをジャマしない相槌だけはうてた。
相槌をうちながら、息子が楽しそうに話すなら、これがラテン語で話されようとも、私はニコニコ相槌をうてると確信しながら聞いていた。
要は、息子の戦隊モノ話が、ラテン語に聞こえた。
ちなみに、ラテン語は、聞いたことないけど。
こんなことを考えながら聞いているから、何年にわたる、息子からの戦隊モノのご教授も、右から左なのだろう。
食べ終わり、駐車場に行く途中に、食品売場があった。
「ばぁばに、何かお土産を買っていく?」
と尋ねると
「オレ、財布持ってきてないし、そもそも最近は稼いでないから、お金もない」
と言う。
我が家は、家事などの手伝いをして、自分のお小遣いを稼ぐ方式をとっているせいなのか、変なところで経済観念と、遠慮を発揮する。
それとも、不登校の子どもあるある、の1つ
『親の懐具合を心配する』
なのか?
いや、ただ私が怖いのか??
なんて考えつつ
「私が言い出したことだから、私が払うから、あなたは何にするか選んで」
と言ったら、嬉しそうに選び出した。
結局、ケーキ屋さんでモンブラン。
「あなたの分も買っていいよ」
と何度も言ったが、頑なに、息子は首をふった。
ところが、ケーキ屋から離れて、1分もたたず
「あのさぁ、やっぱり…オレもケーキ欲しい」
と言い出して、まわれ右。
大好きなチョコレートのケーキを買って、実家へ戻った。
息子、ケーキを傾けないようにと、いつもリクライニングをいっぱいに倒している車内で、姿勢を正して座っていた。
誰かに買っていくケーキのお土産は、この緊張感と、相手の喜ぶ顔が交わる時間だったな。
少し前、観劇後に買った家族へのお土産ケーキを持っていた娘も、そんな顔をしていたっけ。
私の運転も、いつもより気をつけて。
さぁさぁ、ケーキ様のお通りだ!