小4息子は、自分が思い描いた計画が、その通りにいかないと、非常に怒る。
その日も、そうだった。
息子が通うフリースクールの終了時刻に合わせ、いつものように近所の駐車場で、小6娘と一緒に、帰りを待っていた。
そして、いつものように、息子が車の後部座席のドアを開けて、帰ってきた。
開口一番
「今日って、これから予定ある?」
この言葉は、帰り道の途中にある、リサイクルショップに寄りたいときに出る。
月に2~3度、彼は、そこへ行く。
割と広めの店内で、大好きな戦隊ヒーローの玩具をゆっくり見て、そのあと、隣接されたスーパーの食玩売り場で、また戦隊ヒーローをゆっくり見る。
30~40分かかる、その一連の流れが、彼のお気に入りコース。
よほどのことがない限り、リサイクルショップへは寄る。
その日も、息子は100%寄れるものだと、頭の中でバッチリ計画を思い描いていたよう。
ところが、その日、私の体調が少々悪かった。
子ども3人にまわりまわった風邪が、とどめとばかりに、私に来ていたのだ。
経験上、今の症状が、今後、軽度になるか重度になるかの分岐点だと、わかっていた。
「無理はしないで。ダメだったら寄らなくていいんだよ」
そういつものセリフを言う息子に
「じゃあ、体調が悪いから、そうさせてもらうわ」
と、リサイクルショップには寄らずに、帰宅することを、私は選択した。
私がそう答えて、車を発進させると、後部座席から、低いうなり声が、すぐに聞こえる。
やがて、舌打ち。
後部座席の座面をバンバンと叩く音も。
思い描いていた計画が破綻して怒っているときの、息子の、お決まり行動である。
確かに、今までは
「ダメだったら寄らなくてもいいよ」
と言われても
「いいよ。寄っていこう」
という返事を、私はした。
今回も、そう言うと、息子はふんでいたのだろう。
助手席にいる、小6娘とチラリと目が合う。
「また始まった」
と、無言でお互い苦笑い。
こういうときは、無言で嵐が通り過ぎるのを待つのが最良だと、私たちは知っている。
これが家なら、逃げ場はあるのだが、今回は狭い車内。
舌打ちとうなり声、後部座席を叩く音には、いい声のラジオDJと、軽快な音楽も、太刀打ちできない。
怒鳴って鎮めようかとも思ったが、息子と同じ土俵にたてば、火に油を注ぐようなものなのも、経験済み。
だから、舌打ちをした。
リズミカルに、息子の数倍の、た~くさんの舌打ちをした。
信号で停車したら、リズミカルな舌打ちに合わせ、運転席シートも叩いて、さらにリズミカルに。
助手席の娘も、同じように合わせてきた。
後部座席の息子は
「うるさいっっ!静かにしろ~!!」
と怒鳴ったが、娘と私はお構いなしに、家に着くまで続けた。
家の駐車場に着くと、息子はプリプリ怒りながら、1人家まで走っていった。
この方法が、息子にとって良いのかどうか分からない。
分からないけれど、私と娘が、息子と同じ土俵にのらずに済むには、良い手段だった。
夕食は、怒りんぼう息子の大好物の餃子。
半分くらい食べたら
「さっきは、ごめんなさい」
と、怒りんぼうが謝ってきた。
いつもは、子ども同士ケンカになる、餃子のおかわり、今日は、怒りんぼうが
「1人4つずつね~」
と平和に等分。
さぁ、今日は早めに、母親業務は店じまいだ。