いつも歩く道に、洋品店がある。「洋品店」なんて今は言わないな。
ブティック? アパレルショップ?まぁそんな名前だ。
スタイル抜群のマネキンが洋服を着て、ショーウィンドーでポーズをつけて立っている。
マネキンが、今 着ている服は 春の装い。
花柄のミニワンピース。花柄のミニのフレアスカート。
とても私なぞには着れない代物を、軽やかに彼女たちは着こなしている。
ショーウィンドーは、春真っ盛り。
「早く暖かくなるといいなぁ」
「でも、あたたかくなったら花粉がなぁ」
「今年の流行は、花柄なのか?」
そんなことを思いながら、分厚いコートにぐるぐる巻きのマフラー姿で 横目でチラリとマネキンを見る日々。
季節先取りの物言わぬ彼女たちは、毎日 ポーズをきめながら 私の心の呟きが聞こえているのか否か。
「ねぇ マネキンの彼女ぉ~春もいいけどさぁ、なにより 筋肉痛にならない?そのポーズ?」
「この努力が私たちの完璧なスタイルを成してるの!薄着の季節がくるのよ。アンタのそのブヨブヨの身体、どうすんの!?」
彼女たちは、言葉よりポーズで表現するタイプのようだ。