若いころの父は、待ち合わせの時間に対して、極度の心配症だった。
とにかく、父は、家を早くに出る。
なぜ、そんなに早く出るかといえば、もちろん遅刻をしたくないことが1番。
天気や交通機関、自分の身体不調、その他の事情があっても、遅刻をしたくない。
ならどうするか?
答えは簡単。
早く、出発をする。
なので、早くに出発すれば、遅延なくスムーズにいけば、そりゃ早くに着いちゃうよね という話。
父1人でしているなら構わないのだが、これを家族にも強要。
何度、本人に注意しても、馬耳東風で、しまいには逆ギレするので、家族も黙って従っていた。
その最たる被害例が、私の高校入試。
「会場の学校まで、車で送っていってやる」
と言ってくれたまでは良いが、午前10時集合のところを、午前4時半に着いた。
真冬、日の出前、真っ暗、閉まった校門、その前で
「遅刻しないでよかったな」
と言われた私は・・・。
見かねた守衛さんが、部屋に入れてくれて、コーヒーをごちそうに。
結局、そこへ私は3年間お世話になったのだが。
そして、私の結納のときは、会場のホテルに4時間前に着いた。
実家からは、多く見積もっても、1時間で到着する場所だった。
新幹線で来る、主人の家族は、私たちが到着しているとき、まだ家にいたという。
もちろん、このときの父の感想も
「ほらみろ、遅刻しないで良かったろ!?」
まぁ、どれも、今となっては、笑い話。
現在、85才になった父の大学病院の付き添いを、私はしている。
大学病院での予約時間などは、あってないようなもの。
毎度、2時間遅れが、通常運転である。
父の、今の心配は、自分は、毎度、待ち合わせ(予約)時間の前に来ているのに、待ち人(担当医)がなかなかない現れないこと。
やっぱり
『待ち合わせ場所で待つ』
のは、父の人生のマスト事項なのかもと、父の隣で、待合室の天井を見上げた。