「リア充」
リア充とは、ブログやSNSなどを通した関係ではなく、実社会における人間関係や趣味活動を楽しんでいること、またはそのような人を指す言葉。「リアルが充実している」が語源となっている。 ウィキペディア
これは、我が夫のことだと断言できる。
夫1人のリア充は、子どもの成長と比例して、充実度が増した。
平日も休日も、早朝から夜更けまで不在が当たり前となれば、家族はどうなるか。
子どもと父親としての溝、夫婦の溝が深くなるのも当然のことで。
その危機を、子どもが生まれて以来14年、ことあるごとに本人に言い続けたが、馬耳東風、暖簾に腕押し。
最近、ようやく多少気づいたようで、初めて1日有給をとって、少しの家事と子どもをみてくれた。
その夫が1~2年前から所属している、小さな合唱団の発表会があると、私にLINEをしてきた。
発表会は、半年前にもあって、そのときは隣町の公民館へ聴きに行った。
夫が所属している合唱団と、それを指導している先生の知り合いらしき、玄人数人も出演して、会議室のような所での発表会。
この合唱団で初めて、歌をきちんと習ったであろう夫が、楽譜をみながら、口を大きく開け、聴いたことがあるような、ないような外国曲を何曲も歌っていた。
玄人の歌うそれとは、天と地の差があると、ド素人の私でさえ、分かりすぎるほどに分かった。
ただ、私の知らない夫が、そこにいた。
半年後の今回の発表会会場は、こじんまりとした音楽専用の場所。
娘と一緒に行った。
夫は、ソロで数曲歌っていた。
半年前より、上手くなっていた。
そういえば、こういうクラシック曲、こういう生歌を、私、夫の発表会でしか聴いてないや。
やはり、玄人の歌は違う。
そしてやっぱり、私の知らない夫が、そこにいた。
私は、リア充の夫に嫉妬しているのか。
友だちという友だちの居ない自分が、惨めなのを認めたくないのか。
それにしても、あの玄人の歌声は、同じ人間とは思えぬ。
あの喉には、どんな機械が内臓されているのか。
帰り道
「座ってただけなのに、なんか疲れた」
「3時間座ってたの、長かったよ」
「夕御飯、面倒だから、お弁当買っていっちゃおうか」
「ドーナッツも買おうよぉ」
娘とは、発表会のことは話題にでず、帰宅。
たまに、ド素人がクラシックを聴くと、感想なをて、こんなもん。
自宅に戻り、買ってきた弁当を食べながら「お疲れ様。良かったよ」と、夫にLINE。
「本日は、誠に有り難うございました。今後とも宜しくお願い申し上げます」という、どこのビジネスメールだよ!の、夫からの返信。
今度は、再来週、所属の劇団の発表会だそうで。