昼間、久しぶりに、実家へ行った。
実家近くの駐車場に車を置き、車が2台ようやくすれちがえるような、歩道のない狭い道を実家へ向かい歩く。
ふと、その狭い通りの反対側をみると、向こうから女性2人が歩いてくるのがみえた。
2人とも少し腰をまるめていて、70~80代だろうか。
2人とも、黒い日傘をさしている。
狭い道なので、2人は前後に1列に並び、少し間をあけて、無言で歩いていた。
そんな2人の姿を何とはなしに見ていると、段々と近づいてくる2人の背格好がそっくりである。
腰をまるめた角度も。
そして、日傘・持っている黒い小さなカバンが2人とも同じだ。
まさか・・なんと、着ている黒に白の小さな水玉ブラウスも、黒のズボン、そして靴も、同じじゃないか。
顔は日傘で隠され、見えなかったが・・・
彼女らと、狭い道の向こうとこっちで通り過ぎる。
振り返ってみることはしなかった、いや、できなかった。
あの年齢で、洋服上下・靴・日傘・カバンが、まるっきり一緒の2人の女性。
どこかのイベントに呼ばれての衣装にしては、地味すぎる。
白昼夢にしては、ハッキリしすぎる。
ということは、
「お揃いのコーディネイトで歩く70~80代の女性2人に遭遇した」
ということなのだ。
子どものお揃いコーディネイトというのは、よく見かけるが、この年代の方で見たのは、初めて。
この地方都市で、1人でフラフラ歩くハリウッドスターに会ったような、いや、違う、いるいるとは聞いていたツチノコが道に這っていたような・・これこそ、キツネにつままれたような。
実家に着き、母に、そのことを話すと
「えっ!あなたも見たの!?最近見かけなかったから、引っ越したか、お亡くなりに・・なんて思っていたけれど、まだ居たのね!!」
と、半分驚き、半分笑いながら、返してきた。
どうやら、母曰く、彼女らは、この辺りでは密かなる有名人らしい。
服装や小物はもちろん、日傘で隠れていたが、髪型までまるっきり同じの、完璧お揃いコーディネイトの双子。
彼女らは、どうやら、あの道の先にある商店街に行くことが多いよう。
そこで、スーパーのレジに並んでいると、自分の後ろに並んでいた小柄老女性が、いつのまにか、出口からでていく姿がみえた。
後ろを振り向くと、女性は、まだ並んでいる。
これは、いったい・・・!!
とか
魚屋でみかけた女性が、そのすぐ隣にある肉屋にもいた。
追い越されたはずはないのに、何故いるのか。
という怪奇現象を、商店街で多数の人に起こしていたらしい。
彼女らが同じ格好をした双子だということが分かれば、怪奇現象でもなんでもないことなのだが、それでもあの外見は、少なからず驚く。
「あの双子のおばあさんを、見られたなんて、あなた、今日はついているわよ!ラッキーよ!」
と、母。
四つ葉のクローバーなどと同類に扱われているのを、彼女らは知っているだろうかと、ふと思った日。