84才の父の付き添いで、大学病院に行ってきた。
これまで、父の病院の付き添いは、79才の母がしていた。
2人は、毎月、片道1時間半かけて、バスを乗り継ぎ、病院に行く。
診察の予約はしているが、診察室に呼ばれるまでに2時間以上、特別な薬のために病院の敷地内薬局で1時間半待つ。
そして、また1時間半かけて、帰る。
何度も、病院の付き添いと車での送迎を、私から申し出たが
「2人とも歩けるから、自分で歩けるうちは、歩く」
と、断られてきた。
しかし、母が最近、体調を崩し、今日、初めて、私がその付き添いのお役を引き継いだ。
改めて見る、父の後ろ姿。
本人は「大丈夫だ」と言うが、その歩みはおぼつかなく、キャスター付きの椅子は動いて怖いようで、腰を下ろすのにも時間がかかった。
動きはゆっくりだが、気持ちはせっかちで、診察室前に行った採血室でも
「少し(番号が)進んだかな?」
「今、○○1番になった。あっ、○○2番だ」
「いつもは、こんなに採血で時間がかからないのに、どうしたんだろう」
と、気が気でない様子。
1時間待ちの採血が終わり、診察室前の待合室に場所を変えても
「採血で、時間がかかったから、診察もこんなに遅いのだろうか」
と、心配が止まらない。
しかし、母からは、予約時間から2時間後くらいに、診察室に呼ばれると聞いていた。
時計をみれば、予約時間から、1時間半経ったところ。
「大丈夫、通常運転だよ」
「入ってから出るまでに、20分で終わるような、大学病院だったら、逆に怖くない??」
と、のんびり返事をする。
「そうだよな‥ハハハ」
と父は笑うものの、10分後に
「採血で時間がかかったから、診察も・・・」
また会話が、ふりだしに戻り、戻る。
そんな会話も、何だか、私は面白かった。
父と2人、隣同士で会話するのも久しぶり。
どうでもいい話を、お互いポツポツ話した。
母から、病院での父は我がまま放題だと聞いていたが、今日の父は想像よりだいぶ大人しかった。
たぶん、初めて付き添う私に遠慮したのだ。
今回は、バスで乗り継ぎでなく、私が車で送迎をしたことも、申し訳なく思っているよう。
昔は、父が運転する車に乗っていた。
昔は、父の歩みに追いつかなくて、小走りについて行った。
昔は、他の子のお父さんより、背が高かった父は、私のひそかな自慢。
今は、みんな逆になってしまったけれど、だけども今日は、とてもいい時間だった。