「鼻の薬がなくなってきたから、耳鼻科に行こうかな」
ある日、中3息子が。そう言ってきた。
そんな訳で、夕方に息子と2人、自転車を走らせて、耳鼻科へ。
息子と2人で外出というのは、随分と久しぶり。
気づけば、私も夫の背をも追い抜かし、前に立てば壁のようになった息子。
耳鼻科の駐輪場に着いて、保険証と診察券を渡したら、自分で先に受付へ出しに行った。
診察室へも1人で行くというので、行かせた。
まぁ、何か親が必要とあらば呼ばれるだろう。
個人病院のこと、待合室から診察室へも数秒だし。
結局、私は呼ばれることなく、息子は待合室へ戻ってきた。
「なんかさ、オレの左の鼻の穴のが骨が曲がってて、穴が狭くなってた。だから、鼻づまりしやすいってさ」
レントゲンなのか、カメラ付きの器具なのかで、中をのぞいたらしい。
本人も納得したようで
「自分の身体の謎を、1つ解明できてよかったじゃない」
と私が言ったら
「謎ってほどじゃねぇよ」
と笑って返した。
会計も、薬局も、1人で行った。
薬局の外で、私はぼんやり待っていたら、片手でベビーカーを押し、片手で幼稚園くらいの子供の手を握った親子が薬局から出てきた。
私も、昔は、あんなだったのかなぁ。
しばらくして出てきた息子と、彼の壁のような背中をみながら、自転車で夕暮れの道を走った。
帰りに
「スーパーで夕飯のお惣菜を買おうか?作るの面倒になっちゃったよ」
と言ったら、
「昼の残りの、焼きそばがあるんだから、それでいいよ!金がもったいねぇよ!」
と。
本当に金の心配なのか、一刻も早く帰宅したいのか分からないが、ちょっと前まで、私の手につかまっていた息子が、いつのまにか一丁前の口をきくようになったものだ。
壁のようになった背中は、ダテじゃないのぉ。
ちょっと嬉しくなって、ニンマリ。
はて、同じセリフを、夫が言っていたら、私はニンマリしたろうか。
同じ男性なのに、立場が変わると、同じセリフもとらえられ方が180度変わってしまう。
この不思議というか・・せつなさ・・不条理・・そんなことを、ちょっとだけ考えた夕方。