少し前に、近所のかかりつけの皮膚科医院が 閉院してしまった。
1人きりの医師が高齢であったためだ。
閉院の2~3か月前から体調を崩していたようで 診療時間が短くなったり、臨時休診もあったので予兆はあった。
次からは 遠くの皮膚科まで行かなければならない億劫さもあったが、それよりおじいちゃん先生に会えなくなるのが寂しかった。
おじいちゃん先生には、子ども3人に加えて私も診てもらっていた。
最初に診てもらってから8年になる。10才になる1番上の息子がまだ幼稚園に行く前で、下2人は生まれていなかった頃から。
子どもを診るときの おじいちゃん先生の第1声は、「よぉ!○○!元気か?今日もママの膝の上かぁ?そろそろ終わりにしろよぉ」
そう。おじいちゃん先生は べらんめぇ口調 なのだ。
「偉そうだ」「子どもが恐がる」と、嫌がる人もいたが 私は嫌いではなかった。
みていると 診察は丁寧だし、同じ口調でも子どもによって少しずつ声のトーンや 話す内容が違うのが分かるから。これは、だいぶ気を遣っていると思った。
でも、このおじいちゃん先生 その昔は、この辺りで1番大きい総合病院の皮膚科部長をして かなりブイブイいわせていたらしい。
近所の他科の医院で、かかりつけ皮膚科がおじいちゃん先生だと言うと「あぁ、あの天上人ね」「あぁ、王様のところか」と。
近所の花屋さんも、八百屋さんも「天井向いて歩いているような人だった」「お辞儀をすることを知らない人」と散々な云われよう。
「白い巨塔」を地でいっていたって感じなのか??
だが巨塔から下界におりて開業して、少しずつそうではいけないと おじいちゃん先生は気づいたらしい。
私が診てもらった頃には、ずいぶんとまるくなっていたわけだ。
おじいちゃん先生がいなくなって 新しいかかりつけの先生は、おじいちゃん先生とは真逆キャラ「~ですねぇ」「大丈夫かなぁ~?」幼稚園の先生かと思うほどのニコニコ優しい先生。
おじいちゃん先生のキャラでは、今のご時世なかなか開業医もやっていけないよなぁ・・・と思いつつ、あの伝法な口調が無性に聞きたくなる。