吾輩はズボラなるままに

15才、中1、小5の3児のママです。子ども全員明るくニート&不登校中。ズボラ万歳で過ごしています!

母の話

私が子どもの頃、母が

「私はもうすぐ死ぬと思う」

と言い出すことが、何度もあった。

 

小中学生くらいまで、母が

「死ぬ」

と口にするたび、悲しくなってしまったが、高校生くらいになると、これはネタなのかなと思うように。

 

普段の母は、非常にパワフルだった。

 

安売りと聞けば、自転車でどこにでも、何度でも往復し、重たい戦利品を、荷台にくくりつけ、えんりゃこりゃと運んで帰ってくる。

 

私たち子どもの学校や塾の宿題と予習復習を、近所でウワサになるほどの檄を飛ばしながら見る。

 

「あんな集まり、楽しくもなんともない」

と言いながら、陶芸教室やら刺繡教室、編み物教室へ行く。

 

「誰もやらないから、仕方ないのよ」

と言いながら町内会やPTA役員を何年もする。

 

「ホント、あの人は、ろくな話しないんだから」

と言いながら、ママ友や親せきと数時間の長電話をし、自分の周囲のあらゆるネタを、ガッチリつかんでいる。

 

これが、母の毎日だった。

 

そんな人が、突然に

「私、もうすぐ死ぬと思う」

と言われた日には、子どもはビックリする。

 

初めのうちは、母の

「死ぬ」

の言葉のインパクトが強すぎて、それにばかり気が向いていたが、そのうち、その理由が、どうもおかしいことに気付いた。

 

その理由というのが

「昨日、幽体離脱をした夢を見たから」

「子どもの時に毎日、金縛りにあっていたから」

「出産するまで、ウェストが52センチだったから」

「足の小指を2日続けて、部屋の角にぶつけたから」

 

そして、決まって締めは

「子どものとき身体が弱くて、医者に、この子は大人になれないって言われたの」

「おじいちゃんが、結婚相手(私の父)のことを気に入らず、心労で、どんどん痩せちゃって、ウェディングドレスが採寸するたびにゆるくなっちゃって」

「最近の若いアイドルが細いと言うけど、私の方が細かった」

 

『もうすぐ死ぬ』

そう思うにいたる理由が、私には分からなかった。

 

そんな母から電話があった。

「私、自転車で転んじゃって」

御年、80才の母のこと、すわ、骨折か!?と、こちらは心配したが、膝を擦りむいただけと。

 

「ホント、膝が痛かったわぁ」

と言いながら、翌日から、購入したヘルメットと膝あてをして、また自転車をこいでると。

 

「あっ、でもね、買った荷物はスーパーの配達を頼んでるから」

「だって、お父さん動けないんだもん、私が買い物しなきゃダメでしょ」

と、自転車をこぐ理由を説明してくれた。

 

子どもの時の母を診てくれたお医者さん、お陰様で、母は無事に大人になってから、60年経ちました。

 

ここ20年ほどは「死ぬ」と言いません。

 

ここ最近は、アイドルのスタイルに言及しません。

 

足がつることはあっても、幽体離脱とか金縛りはないようです。

 

近所や親戚のウワサ話は、大好きです。

 

子どもに、自分のことで迷惑をかけることはありません。

 

私も、子どもに迷惑をかけない80才になっていたい。

 

まぁ・・それ以外は、反面教師にして。