息子の料理
小4息子がフリースクールへ行ってしまうと、家には小6娘と、昼夜逆転で寝ている中3息子と、私。
その日、冷蔵庫には、昨日買ってきた砂肝3パックが入っていた。
寝室から出てきた中3息子が、起きぬけの冷蔵庫パトロールを終え
「オレさぁ、砂肝が、食べ物の中で2番目に好きなんだよ」
とニンマリ。
「え?初耳。いつのまに?」
と私が返すと
「前からだよぉ」
と息子。
食わず嫌いの多い息子は
「見た目が、ちょっと・・」
と、砂肝には見向きもしなかったのに。
そして、冷蔵庫の砂肝のパックを手に取り
「これ、いつ料理するの?」
と私に尋ねてきた。
今日の夕食に出す旨を話すと、ちょっと間をおいて
「1パックだけちょうだい!すぐ食べたいから、今、オレが作る!」
「おい!お前も作ったら食べるか?」
と、居間でゲームをしている妹にも分け前を約束して、意気揚々、包丁とまな板に手を伸ばした。
「下処理なんかしなくても、オレはいい」
「砂肝って、要は肉だろ?だったら、いつもと同じ味付けでイケんだろ!」
確かに、息子は、豚小間肉を照り焼き風にしたものが、得意料理。
さて、どうなることやら。
私は、居間で携帯を片手に寝転んで、高みの見物をきめこんだ。
しばらくして、醬油のいい匂いがしたなぁと思ったら、そのうち焦げた匂いが。
どうした、どうした!?と台所に行ったら、砂肝はもう皿に盛られていた。
「ちゃんと火を入れなきゃと思ったら、ちょっと焦がしちまった!」
と、へへっと息子が笑っていた。
砂肝は、確かにちょっと茶色が濃かったが、まぁギリギリセーフ。
1つもらって食べたら、ニンニクが効いていて、なかなかにいい味。
小6妹にも、約束通り1/3くらいをあげていた。
もちろん、息子自身も、皿に山盛りにした砂肝を、無言でほおばっている。
我が家のリビングに、ちょっと醤油の焦げた匂いと、ちょっといい時間がただよった。
だが、忘れちゃならない。
調理前に妹には
「砂肝をあげよう」
と言って、約束通りあげていた。
ところが、親の私には調理前も後も、その言葉がいっさい出てこないのは何故だろう?
仕方なく、私が欲しいと言って、ようやく1つだけもらえたが。
この事態を、キミはどう思っているのかね?ことと次第によっては・・。
な~んてことを言ったら、私の器の小ささが、更に露呈しちゃうよなぁ。
焦げた匂いと、いい時間と、一抹以上のモヤモヤが残った。