月に2度、私は車で片道30分ほどの病院に通っている。
月に2度のうちの1度は、問診と検査のため。
もう1度は、数日後に検査結果を聞いて、薬をもらうため。
この2回の片道30分かかる病院通いが、私は嫌いではない。
嫌いではない理由の1つが、病院の先生をはじめスタッフ皆さんが、実に良い人なこと。
更に、待ち時間少なく、病院に入ってから出るまで、10~15分くらいで済むということも魅力。
だが、1番の理由は、病院への往復の車の中で1人の時間が持てること。
子供たちも成長したので、昔のように一瞬も目を離せないということは、もうないから、ストレスは大々的に軽減している。
しているのだが、家に24時間365日子どもがいて、寝室も、お風呂も、買い物も、食事も、フリースクール送迎も、すべて子どもが必ず1人は一緒。
一緒とはいえ、一緒に遊ばなくては、ミルクをあげなくては、オムツを・・なんてこともない。
なんてこともないのだが、車で1人、病院まで好きな曲をかけて運転する時間が、とてつもなく楽しい。
病院に行く日は、雨が降ろうが、道が混んでいようが、気にならない。
だって、車の中で、私は「母親」という肩書のない、一個人になれるから。
バックミラー越しに、子どもの表情を確認して、安堵したり心配したりしなくていい。
車に入ってきて、第一声が
「今日の昼ご飯(夕飯)はなに?」
と聞かれることもない。
分かっている。
誰も、子供の表情を見ろとは言ってないし、誰も、食事にプレッシャーをかけていない。
そう、これは、贅沢な悩みである。
あと数年したら、子どもは、私に見向きもしなくなるというのに。
なるというのに、今日も、小5娘の
「早く帰ってきてね、絶対よ、すぐに、すぐに帰ってくるのよ!」
の念押しを背中で聞きながら、私は病院へ行くため、ドアを開けて外に出た。
出た途端
「さぁて、何を聴きながら行こうか」
と頬が緩み、足が軽くなった。