実家に届け物をした。
実家は、車で片道30分ほどのところ。
そうすると、母は、いつも食べ物を持たせてくれる。
その日は、牛の塊肉だった。
我が家は、私がケチなので牛肉は買わないから、ごちそうである。
これをもらったときの、我が家のメニューは『ビーフシチュー』一択。
家に着いたら、もらってきた肉をコトコト煮て、箸で切れるくらいに柔らかくする。
そうしたら、野菜を大きめにザクザク切って、柔らかくなったお肉と一緒にして、ビーフシチューのルーを入れて煮るだけ。
母から教わった作り方だが、私の子どものときに、これが出てきた記憶がない。
同じ色の系統ならば、ビーフシチューよりカレーが多かったし、同じシチューの系統でいえば、妹が好物だったので、クリームシチューが食卓に並んでいた印象。
そもそも、牛の塊肉が出てきた記憶がない。
カレーにしても、シチューにしても、鶏肉だった。
牛の塊肉の入ったビーフシチューが出てきたのは、私の子ども3人、いわゆる孫の影響である。
もっと子どもたちが小さかった時、休みが取れると何日も、実家に3人の子どもを連れて泊まった。
実家での私は、親に甘えに甘え、子どもたちの食事やら、遊び相手、はては入浴まで、母に頼った。
当時は、いっときも目が離せず、飛んだり跳ねたり、泣いて叫んで・・な3人だけでも大変なのに、食事面では息子2人は、お肉大好きで野菜は超嫌い。
「お腹が本当にすいたら、何でも食べるわよ!そんなに気にしなくていいって~」
と寝転がりながら、のんきに言う私に
母は
「お肉だけ食べて、野菜は残しちゃうのよ」
「野菜を細かくして、チャーハンにしたら食べてくれたのよ」
「昨夜は野菜入りハンバーグでしょ、その前は野菜入り餃子で・・今日はどうしよう」
と、いつも頭を悩ませていた。
どこか楽しそうに。
その中で生まれたのが、牛の塊肉の入ったビーフシチューだった。
「野菜が大きく切ってあっても、3人ともペロリと食べちゃうの!まぁ、びっくりよ!」
そう言って、ニコニコと母は笑っていた。
そんなビーフシチューである。
今回も、家にあったジャガイモ・玉ねぎ・人参を全部入れて、かさましをして、我が家で1番大きな鍋で煮る。
子どもたちは歓声を上げて、ご飯にかけて食べたり、パンにつけて食べたり。
夜に作ったシチューは、翌日の昼まで残った。
全員大満足で
「また作ってよ」
という言葉とともに、今回も食べ終えた。
これは、子どもと私の、おばあちゃんの味であり、おふくろの味。