少し前にSNSで、アイドルが、何かの企画で、中学校だか高校だかにサプライズで訪れたことに、怒っている書き込みを見た。
「自分は、そのアイドルにお金をつぎ込み、それでも会えないというのに、何故、この学校の生徒たちは簡単に会えてしまうの!?ズルい!」
そんなような、書き込みだった。
たぶん、書いたのは、若い人なのだろう。
衝動的に書いたのかな。
書き込みには、それに賛同するコメントが多かった。
それを見て、思い出した。
私が学生の頃、世間を騒がせた大事故があった。
そこで九死に一生を得た子のもとに、その子が好きだという大人気アイドルがお見舞いに行ったというニュースがあった。
そのニュースの翌日、クラスの女の子たちは
「あの子だけ、アイドルに会えるなんてズルい!」
口々にそう言った。
皆がそういうものだから、私も、何となく、そうだ、そうだと賛同してしまった。
そのアイドルのファンでもなく、そのニュースのことも、助かった子のことも、ろくに知らなかったのに。
クラスの女の子たちのセリフを、そのまま帰宅した父に、得意げに言ったら、静かに父が
「生き延びた、その子の気持ちが想像できないか?」
返す言葉がなかった。
今になっても、いや、今だからこそ、思う。
想像するって、想像力って大事。
想像力がない故、どうして、こうも、私の作るおかずは茶色いのか。
想像力がない故、どうして、こうも、私の食べる手は止まらないのか。
ドラえもんの、もしもボックスがあったら、食べても太らない世界をお願いするし、それから・・・という想像力は、ふんだんにあるんだけど。