小4の娘が「あの遊び場に行きたい」と私に頼みにきた。
『あの遊び場』というのは、隣の市にある 広い室内にトランポリンやゲームコーナーがある、子ども向けの室内遊技場。
これまでにも、何度か行った場所である。
郊外にあるものだから、休みの日でも、それほど混まない。
というわけで、平日の昼前から 小4娘と小2の息子を連れて乗り込んだ。
案の定、広い室内には未就園児の子どもと親が2~3組。
ほぼ貸し切り。
今回、娘が「ここに来たい」と言うには理由があった。
少し前、小2の息子が所属するフリースクールで、別の市にある室内遊技場に行く行事があった。
息子も行くことになっていた。
それを聞いていた、フリースクール未所属の娘が「私も行きたい」と言い出した。
なので、フリースクール生徒と同日時に、私と娘も別行動ながら、その室内遊技場へ行くことに。
当日、フリースクールのスタッフと他生徒と共に ご機嫌で室内遊技場に現れた息子。
もちろん、息子を見つけた娘も上機嫌。
私と娘を見つけた、フリースクールのスタッフや他生徒も声をかけてくれた。
思えば、娘には それがいけなかった。
見ず知らずの他人の前では何でもない娘だが、相手が自分を少しでも知っていると分かった途端に、大萎縮する性格。
娘からすると
『遊技場のトランポリンを、上手に飛べなかったらどうしよう』
『大きな声を出して、変な子どもだと思われたらイヤ』
いわゆる、外からみれば「アホか!」と笑っちゃうような 自意識過剰なのだ。
けれど、私もそんな子どもだったから、娘の気持ちは分からなくはない。
ようやく来た遊技場なのに、娘の顔色はみるみる変わり、背中が猫背になる、目線が下がる。
こうなることは、娘も私も分かっていたはずなのに行くことにばかり気が向いて、この状況を想像できなかった。
いや、私は、この時点で娘のテンション急降下の理由が全く分かっていなかった。
「せっかく来たのに、どうしたの?」
「遊ばないの?」
「さっきまで、喜んでいたじゃない!?」
私が何度尋ねても、背中を押しても、無言で私の傍に ピタリとくっつき、下を向いたまま 最後まで娘はそうしていた。
娘と一緒に遊べるとばかり思っていた息子も、訳が分からない様子で、しきりに心配しながら仕方なく1人で遊ぶ。
帰る時間になると、下を向いたままの娘の顔が膨れっ面になって、私の背中を叩く。
「なぁに?どうしたの?」と尋ねるも、娘は口をとがらせ地団駄を踏むだけ。
結局、それは帰宅するまで続いた。
せっかく時間を割いた 楽しいはずの外出が、とんだ結末になったと、私もイライラ。
娘の気持ちが分かったのは、その夜 布団に入ってからだった。
あれは、楽しみにしていた場所で遊べなかった悔しさと、自分の不甲斐なさとが入り交じった、どうしようもない気持ちの表れだったのだと。
娘の身勝手なワガママだと言ってしまえば、そうなのだが、あの日のリベンジも兼ねて、場所は違うが、今回の室内遊技場へ来た。
知り合いの誰もいない場所で、娘は、あのとき遊べなかった息子と、息をきらせ 顔を真っ赤にしながら閉館まで遊んだ。
帰りは、あのときの地団駄の代わりに、スキップをしながら。