ときどき、自分のやる気スイッチが切れる。
そうなると、本当に動けない。すべての感情がなくなってしまい、何も考えたくない。本当に本当に嫌な人間になってしまう。
それは、たいてい19時くらいに起こる。子どもを寝かせるまで、あと2つ3つ終わればいい。そんな時間に起こる。
その日は夕方に、7才の娘ちゃんの水泳教室。送って、終わるまで そこで待っている。
5才の弟くんも、そこへ連れていく。9才の兄ちゃんは、近所の公園で遊ぶというので 後で水泳教室の場所に来るように約束をした。
本当は、水泳教室に行くまえに 洗濯物を取り込み、風呂掃除を片付けたかった。
でも、幼稚園から帰ってきた5才弟くんが「姉ちゃんの習い事についていきたくない!友達の家で遊びたい!」と騒いだ。「遊ぶ時間はないよ」そういうと、5才は号泣。号泣。また号泣。
結局、彼をなだめるのに 洗濯物取り込みと風呂掃除ができなくなった。
娘ちゃんが習い事をしている間、5才を連れて買い物に行く。野菜を買い、空腹だというので多めに稲荷寿司を買った。
17時過ぎて、お菓子を食べさせるよりはよかろう。なんなら、これを 夕食にしちゃおう。
教室の終わった娘ちゃんの髪を乾かしながら、子ども3人は 稲荷寿司をすべて平らげた。
稲荷寿司、残ったら私も食べようかと思って 多めに買ったのになぁ。お腹すいた~。
帰宅したら18時半過ぎ。洗濯物取り込みと風呂掃除をしなくてはと思いつつ、空腹に勝てず夕食を優先してしまった。この時点で、もうやる気スイッチは切れかかっていた。
残り物のシチューをモソモソと1人で食べていたら もう19時過ぎ。
残った家事をやらなきゃと思いつつ、携帯をいじっていたら 9才と5才は寝てしまった。
19時半。完全に、やる気スイッチが切れてしまった。こうなると、まず話をするのが億劫になる。すべての音が雑音に聞こえる。
こういう時に限って、娘ちゃんが元気。わかるのだ。兄と弟が寝てしまい、母親を独占できると思って元気なのだ。
お母さん、お母さん、ジャンケンしよう!
お母さんとお風呂に入る!お母さんがお仕事おわるまで 私 ず~っと待ってる!
お母さん、トイレに行くの?私も一緒に入りたい!
お母さん、携帯貸して!写真撮ってあげる!
「もうその”お母さん、お母さん”の声すら もうダメなのだ。聞きたくない。私を1人にして。話しかけないで。あなたのために もう動けない」
そう7才の娘ちゃんに言ってしまった。
一緒に入浴したが、娘ちゃんは1言も話さなかった。私も話さなかった。お互い無言で浴室にいて、着替えて、娘ちゃんは 私が寝るのを待っていた。
娘ちゃんのけなげな姿はわかる、わかるのだが、それさえも鬱陶しく感じる。「ごめん。ムリ。1人で寝て」
娘ちゃんは黙って寝室へ行った。
やれやれと思ったら 入れ替わりに、今まで寝ていた5才の弟くんが目を覚ました。「ママが隣にいない。ママがいないと眠れない」号泣。号泣。また号泣。
なんでこんなときに。ダメだ。あぁもう!鬱陶しい!「ごめん。ムリ。1人で寝て」私はPCをたちあげ、その世界に逃げ込んだ。
隣で号泣する5才。
わかるんだけど、こうなっちゃうと、もうホント最低のダメ人間だ。こういうのを「育児放棄」というのだ。
いや、このイライラが暴力にいくかも。崖っぷちで何とか踏みとどまっている。指1本でちょいと押されたら、もう手が出る。
5才は、PCの隣のソファーで泣きつかれて寝てしまった。
「なんてひどい母親」と、脳のすごい片隅で思っている。うそ。本当は思っていない。そう思いたいだけ。
虐待のニュースが流れている。そう、虐待は悪いことなのだ。だけど、それは本当に薄い薄い紙一重で。明日は我が身で。いや、もう今の私が虐待か。
1日のおわりに、こんな終わり方なんて。子どもたち、ごめん。