父は忙しい人だった。
朝は、私が起きる前に出掛け 帰宅は寝てから。
休日も、出勤するか 接待ゴルフ。
たまに家にいても、食事以外は起きてこなかった。
だから、父とどこかに遊びに行った記憶は ほとんどない。
そんな父が、私が小学3年のとき 鉄棒の逆上がりの練習に付き合ってくれた。
父が休みの日曜に、朝早く 近所の公園で練習をした。
運動神経抜群の父からすると、逆上がりごときが出来ない私の姿は きっとイライラしたであろう。
でも、1度も怒らなかった。
ずっと励まし、誉めてくれた。
練習帰りは、必ず 近所のファミレスでいっしょに朝食を食べた。
練習は1~2カ月続いた。
その甲斐あって、クラスで1番最後に逆上がりができた。
体育の時間に、クラスメイトの前で逆上がりを披露したときのことはいまだに覚えている。
嬉しくて恥ずかしくて、嬉しくて。
披露したあとに、お父さんに早く早く知らせなきゃと思った。
父は、育児にも家事にもそれほど協力的ではなかった。
なのに、覚えている。
私は、我が子の記憶に何か残せるだろうか。