私のコーヒーの思い出は、ウインナーコーヒー。
「コーヒーの中にウインナーが入っているかと思った」なんてよく笑い話にもなる、あのコーヒーだ。
実際は、ホットコーヒーの上にホイップした生クリームがのせてある。
初めて飲んだのは、隣り駅の喫茶店。
小学校5~6年生だったか。
その日は、珍しく母と二人きりの外出だった。
母は「昔、働いているときによく飲んだの」とウインナーコーヒーを注文。
運ばれてきたコーヒーに蓋をするように、生クリームが上品にコーヒーを覆いかくしている。
自分の前に置かれた、クリームソーダがやけに幼稚っぽくみえた。
母にせがみ、少し飲ませてもらった。
少し苦いようなコーヒーと甘い生クリームが、とろりと溶け合う。
こんな味が世の中にあるのか。
味もさることながら、ウインナーコーヒーを飲む自分が少し大人になれた気がした。
結局、母のウインナーコーヒーをすべて飲んでしまった。
ウインナーコーヒー熱は冷めず 生クリームを買ってきて、家で何度も作った。
甘いミルクコーヒーを飲む、妹を幼稚だとバカにしながら 。
しかしそれもいつの頃か、甘過ぎる気がして 飲まなくなった。
今、カフェでウインナーコーヒーはおいているのだろうか?
いつまでも残る甘い母との思い出。
いいものだ。