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小学校2、3年だったか。「あなたの将来の夢は?」という作文を書く宿題に、わたしは「本屋さん」と書いた。
それが先生に珍しく誉められた。「本屋さんに、なれるといいね」と言われて、なんとなく頷いたのを覚えている。
でも、本当は 特になりたくなかった。なりたいものがなくて、提出日前夜に ようやくひねりだしたのだ。
周りの女の子たちは「保母さん」「アイドル」「お花屋さん」「ピアニスト」
当時、私は 学校では1言も話せなかった。大人しいを通り越して ちょっと異常だった。そんな自分が、周りの女の子たちのようなキラキラした夢が似合うはずもない。
というより、将来なりたい職業など 私にはなかった。興味もなかった。何とも、かわいげのない小学生である。
「本屋さん」をひねりだしたのには、一応 理由があった。好きな本を1日中読んでいられると思った。子どもの目から、近所の本屋のおじさんは、なんだか暇そうにみえたし。
本屋さんが大変な職業だと知ったのは、ずいぶんと後のこと。
私の人生で本を最も読んだのは、小学生だった。DVDも動画もない時代。ゲームもうまくできない私に残っていたのは本だった。
お気に入りは「シートン動物記」実際の動物はそれほど好きではなかったが、本の中の動物は、厳しい自然の中でドキドキする物語の中に生きていて飽きなかった。
ミステリも、恋物語も、何でも読んだ。休みの日は、1日中寝転んで読んでいた。
上記の23時から開く、尾道の本屋さん。大人の夢を売っているような。映画のような。
休みの前の日にでも寄って、ゆっくりあれこれ選んでみたい。店内は、ゆっくりとした静かな時間が流れているのだろうな。想像しただけで・・なんて素敵!
ところで、我が家の子どもは 活字嫌い。本屋に行ってもマンガ・ぬり絵・戦隊ヒーロー絵本を持ってくる。図書館は3分で「帰ろう」と。
このまえ「お母さん、今日はオレが 寝る前の読み聞かせをする」と、10才の兄ちゃんがいうので ようやく本の良さを分かってくれたかと喜んだら、マンガの朗読だった。
マンガの朗読を聞いたことがあるだろうか?このマンガの朗読、読んでいるほうはノリノリだが 聞いているほうは修行でしかない。
モノにもよるが、聞いているほうは ハッキリいって全くわからない。
想像力を最大限に駆使し聞いていても 小学生の学校での話かと思ったら、宇宙人の宇宙船での話だったという 根本的な間違いがあるほどだ。
まず 小学生の読むマンガは、主人公が人間だとは限らない。
そして擬態語・擬音語がとにかく多い。笑い・叫んだりも多い。「キラキラ」「ぐにゃぐにゃ」「わははは」「ギョエ~」だけで話が進む。
そんな難解すぎる朗読中、ぼんやりしていてはいけない。
「”ぐにゃぐにゃ~” なんて、面白い言いまわしね」「”ぎょえ~” って、よっぽど驚いたのね」と、アホみたいな薄っぺらな感想でも言わなければ「お母さん、ちゃんと聞いてる?」と指導が入る。
寝る前に、罰ゲームを受けている気分だ。
それでも、読み手の10才は 読みながら笑ってしまうほど 目をキラキラ、口元もニコニコ。
聞いていてもサッパリわからない 弟妹が読み手の兄ちゃんに顔を近づけて、1冊のマンガを3人で一緒にみている。
本も、こんな表情で読まれると 嬉しかろう。
私は、いま どんな顔で本を読んでいるだろう。