台所仕事中につけているラジオから、懐かしい曲が聞こえた。
この曲を初めて聞いたのは、高校生のとき。
初めて、電車通学をして 同じクラスの女の子が電車のなかで「聴いてみて」と手渡してくれた。
この曲以外にも、沢山の洋楽を録音してくれた。
たしか、まだカセットテープの時代だった。カセットテープのケースに、曲名と歌手の名前を手書きで書いてくれた。
そんな風に、友達にしてもらったのは 初めてで嬉しかった。
彼女は、どこか大人びた雰囲気で 近寄りがたかったので ちょっとびっくりもした。
そのA面の1番はじめの曲がこれだった。
卒業以来、彼女とは会っていない。
一瞬にして 高校時代のこと、電車通学のこと 学校でのことが思い出された。
中学校まで、学校を楽しいと思ったことはなかった。
楽しくないが行かねばならないところだった。
それが、高校になって初めて「学校が楽しい」と思った。
学校がこんなにも楽しくていいのだろうか「生きていてよかった」と思った。
歌は、音楽は こんな思い出も 時々 運んでくれるからいいんだな。
包丁を手に、心だけが あの頃に戻った。