夫との時間
夫と久しぶりに2人で出かけた。
目的は、我が推しの柏レイソルが出場する、サッカー観戦。
行き先は、国立競技場。
国立競技場で、天皇杯決勝が行われるのだ。
新しくなって初めての国立競技場、天皇杯決勝は、レイソルは11年ぶり。
開始1時間ほど前に会場に到着して、自由席だったので、キョロキョロ空いている席を探し、ようやく見つけた。
夫の席とは少しだけ離れてしまったが仕方ない。
席は、ゴール裏の2階席。
サッカーでゴール裏は、最も応援の熱が高い席である。
いつもは座って応援しているが、ずっと立って応援。
来場者は、6万2千人超のほぼ満席。
すり鉢状の場所で、6万2千人が声を出すと、その声は反響してすさまじい。
自分の声さえ聞こえなくなるほど。
試合は0-0で90分でも決まらず、延長30分でも決まらず、最後はサドンデスのPKとなった。
すさまじい声は、PKを迎えると、うねりとなり、更に大きくなり。
声の渦の中に、自分が巻き込まれてしまっているようだった。
結局、最後の最後で、我がレイソルは負けてしまったが、あまりにも壮絶な試合で、両チームともあっぱれとしか言いようがない。
これで、今年のレイソルは仕事納め。
帰りの電車の中で、夫とずっと話をし、そのまま2人で外食。
小さな居酒屋のカウンター席で
「給食で、クジラの煮つけが好きやった」
「え?クジラ?そんなの給食で出たことないけど」
「この前読んだ本で、面白いのがあってさ」
「へえ~何?何?」
そんなどうでもよいことを小一時間話した。
家庭より趣味に重きをおく夫は、平日はもちろん週末も家にほぼいない。
たまに家にいても、自室にこもって出てこない。
何度話し合っても、夫は変わらない。
家にいないが、家族にハラスメントをするわけでも、給料を持ってこないわけでもない。
腹を立てるだけ、時間と労力がもったいない。
彼のことはATMだと思うことにした。
ATMだと言っておきながら、夫に誘われればホイホイ付いていく。
要は、私は、夫との関係を断ち切りたいとは思っていないんだ。
外食を終えて、家へ帰る道すがら
「こういう時間えぇな」
と夫が言って
「月に1度くらい、2人の時間を持とうよ」
と私が言って
「いいね」
と2人で言った。
私は、徐々にでも、夫との関係を修復していきたいと、まだ思っているようだ。
「それでいい」
という天使の励ましの声と
「お前は甘い奴だ」
という悪魔のため息が交互に聞こえた夜だった。