推しは尊い
我が家は、子どもへの、月々のお小遣いはない。
その代わり、家事をすると、お金を支払う制度にしてあり、それが子どもたちのお小遣いとなる。
さて、自他ともに認める、仮面ライダーオタクの小3息子。
少し前のこと、彼は、たまたま私と一緒に立ち寄った近所のスーパーで
「あそこの棚にある、500円の仮面ライダーの玩具2個を、お小遣いで買いたい」
と言い出した。
要は、千円の買い物がしたいと。
しかし、息子の貯金箱に、千円の大金はない。
千円を貯めるには、あと、家事(ものにもよるが)10回分をしなければならない。
そして、千円は、自身のお金で買う、史上最高額の買い物。
それでも買おうと、踏み切ったのは
「今までの仮面ライダーで、最も好きなキャラクターの玩具だから」
の1点につきると言う。
私に前借りというかたちで、その玩具を、今買って、千円分を後で家事をして払うということも提案したが
「借金はしたくない」
と、息子。
そう決断すると、息子の帰路の歩みがやけに早くなる。
もう一刻も早く千円を手にして、今行ったスーパーにとってかえして、お目当ての現具を買わなくてはと。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ~」
と、母ちゃんは置いて行かれぬように、必死。
息子は、トイレ掃除を10回分を、帰宅してすぐにすると言い出した。
既に、トイレ掃除は、私が朝に終わらせていたが、まぁ掃除は何度してもかまわない。
それより、トイレ掃除1回でいくらという料金設定の中、10回分をこれから1度にするという、息子の言葉の意味が、私にはわからなかった。
分からなかったが、させてみた。
トイレ掃除の方法を、一通り説明し、それからしばらく、トイレから息子が出てこない。
「終わった!!」
と、出てきたのは、30分後。
どれどれと、トイレを見に行くと、便座の表側が赤茶色く汚れている。
指摘すると
「さっき鼻血が出ちゃってさぁ、それが残っていたんだ~」
と言って、そこを拭き始めた。
いろいろ、興奮しすぎたんだな。
正直、息子の言う10回分のトイレ掃除と、私のした1回分の掃除との違いは、分からなかったが、お金を支払った。
そこから、30分前に行ったスーパーに、また2人で行って、お目当ての玩具を買った。
玩具は、お菓子売り場にあり、ガム2つと10センチくらいの小さなフィギュアがセットになったもの。
そういえば、この手のお菓子は、私の時代にもあった。
私の時は、リカちゃんの家具つきだったような・・。
帰路の息子は、小躍りして、上機嫌。
「推しは、やっぱり尊いんだよなぁ~!!」
そう、近所中に響き渡る声で叫んだ。
そして、今
「お母さん、これ(フィギュア)カッコいいと思わな~い??」
と、毎日聞かれる。
正直、よくわからない。
良くわからないが、その良くわからない息子の推しに、彼の姿が届け!と思う。