花は咲く
備蓄してある水の消費期限が近づいているので せっせと飲んだり、料理に使っている。新しい水との入れ替えの時期である。
東日本大震災の日、東京で地下鉄に乗っていた。現地ほどではないが、多少の被害と 忘れられない恐怖があった。
地震のあとに待っていたのは 水不足。「水を関東の人間が買い込みすぎて 被害地にまわらない」と非難された、アレだ。
当時、長男が2才。娘がお腹にいた。情報が錯そうするなか 子どもには、問題の少ない水が必要だと思った。備蓄しておいた水はあったが、予想以上に減りが早いことに驚いた。
水がどこにもなかった。区がみかねて、備蓄の水を乳幼児・老人・病人のいる家庭を優先に配布をしてくれたが、1家庭500mlを2本では足りるはずもなかった。
子どもを外に出すのも怖かった。
しばらくして、主人の異動で東京を離れた。離れた場所に来ても、数ヶ月は水には敏感になったままで、皿洗いさえ浄水器の水や、買った水で洗っていたら 笑われた。
「あぁ、少し離れた場所ではそんなものか」と 複雑な気持ちになったことを覚えている。
あれから、水の備蓄は多めにしてある。
数日前に、主人の知り合いがひらいた「東日本大震災復興支援ライブ」に家族で行った。20人も入れば いっぱいになる小さな会場で、歌とピアノのライブ。
その中の1曲で「花は咲く」があった。
この歌に 涙がでた。3人の子どもが泣く私を、不思議そうに見ていたが 誰も理由を聞かなかった。
子どもたちには いつか、きちんと話したい。
傷ついた心にも大地にも、花が咲くことを願って。
合掌