色気より粕漬
魚が美味しい。
年々、美味しく感じる。
焼き魚なら、粕漬がいい。
子どものころから、粕漬の魚は好物だった。
初めて食べたのは、親戚が土産に買ってきてくれたもの。
「魚久(うおきゅう)」の粕漬だった。
いっぺんで、好きになった。これは、家では出せない味だ。
しかしながら、これがなかなかいい値段がするものだから その親戚が買ってきてくれないと口にできない。
年に1度食べられるかどうかの、幻の味であったから 余計に好きになったのかもしれない。
新婚のころに たまたま 魚久のお店の近所に住んでいた。
2~3か月に1度、朝早くお店に整理券をもらい「切り落とし」を買いに行った。
切り落としでも、幻の味が買えることが嬉しくて。嬉しくて。
焦がさぬように焼いて 温かいうちに食べなくてはと思う反面、あんまり早く食べちゃ もったいないとも思ったりして。
しかし 今は、遠くて もう何年も食べていない。
私は「美味しい店」が見つかると、どうも離れていってしまう運命のようだ。
通販で買えばいいのに。
分かっている。でもさ、そこはほら・・もったいないじゃない。
そうはいっても 子どものころ土産にもってきてくれた親戚はいないのだから、自分で買うしかないじゃない。
じゃあ、今度自分へのご褒美に買おうかな。魚の粕漬。
色気より食い気。