サンキューカードの行方
「ちょっと、これみてよ」
10才の息子が図工の授業で作ったという、開くと飛び出す 立体的なカードを見せてくれた。
学年も最後ということで、自分が感謝したい相手に「サンキューカード」を作ったようだ。
カードを開くと、息子の宝物の四角い携帯のゲーム機が飛び出す仕組み。ゲーム機といっても、四角に切った紙に操作ボタンの丸い紙を数ヶ所ポンポンと貼り付けたモノ。
「これさぁ、上手くできて 初めて″賞″シールもらったんだ」と息子。
見ると、カードの隅に 小指の爪くらいの小さな丸い「賞」の字のシールが貼ってあった。言われなければ、見逃すほどの小ささ。
これは、クラスで作った作品内で良いものを先生が選んで貼ったシールらしい。
なるほど。見逃すほどの小さいシール。でもいい、いい。そんなことは問題ではない。
初めての″賞″シールのついたカードを、私にくれるんだぁ。ゲーム機を買ってくれた親に「サンキューカード」か。やだぁ、嬉しいじゃないか。
でも、さっきから気になるのだが カードの隅に描いてある 男の子2人の顔。「これは、誰?」
「あぁ、こっちがオレでぇ こっちがA君!」
「A君??なんでA君がいるの?」
「だって、オレが感謝したいのはA君だもん。いつも、一緒にゲームしてくれたり遊んだりして」
カードを裏返すと、そこにはA君への謝辞。
「・・・・あっ、このカードは A君に渡すんだぁ~へぇ~あぁそうか~」
「当たり前じゃん」
「当たり前じゃん」が、ことさら頭と心に響いたのは 気のせいだろうか。
なるほど。こうやって、子どもは親元を離れていくのか。
うんうん。成長を喜ぼうじゃないか。悲しくなんか、全然ないもんね~~。ないもんね~~。