息子のフリースクールが主催する、1泊2日の宿泊行事に、中2娘と小6息子と共に参加した。
この行事は、フリースクール生徒はもちろん、OB・OG、保護者、フリースクール外部の人でもOKというもので、宿を貸切にする。
参加者は、老若男女30人ほど。
この行事への参加は、今回で3度目。
これまでは、家族3人で同じ部屋にしてもらっていたが、今年から息子は男性たちの部屋に泊まるというので、娘と2人部屋。
宿に着いた途端、息子は見知ったスタッフや生徒の姿を追いかけて、廊下の先に消えた。
娘と私2人になり、荷物を手に指定された部屋に入ると、そこにはベッドが2つ。
普段は布団の我が家なので、ベッドというだけで、娘は歓声をあげた。
それにしても、普段、ほとんど外出せず、家族以外と接することのない娘が、これに参加をしたのは意外。
確かに、過去2回も娘は参加はした。
参加はしたけれど、他の参加者とのほとんど接点もなく、私と部屋に引きこもって1泊2日が終わった印象だったので、今年は行かないかもと思っていたが。
今回も昼過ぎに宿に着いたが、夕食まで部屋から1歩も出ず。
夕食後、食堂から部屋に戻る途中に大広間があったので、ひょいと覗く。
この大広間は、夜通しボードゲームや話しができるように開放している。
広い畳敷きに、いくつもテーブルが出されており、部屋の隅には、山と積み上げられたボードゲームとお菓子に飲み物。
各テーブルには、夕食前までしていたのだろうか、将棋や、麻雀、ジェンガなどのゲームがそれぞれにみえた。
そうかと思えば、沢山の紙と色鉛筆やペン。
ここのテーブルは、絵を描くことが好きな人たちのものだろうか。
それまでは、多くの人で賑わっていたろう大広間に、そのときは誰もいなかった。
大勢の人が苦手な娘も、誰もいないことに安心したのか大広間に一緒に入ってきた。
「絵しりとり、しない?」
絵を描くことが好きな娘を誘うと、コクリと頷いた。
紙と鉛筆を娘に渡して、2人でテーブルへ。
思案顔をした娘が、鉛筆で紙に描き始めると、息子と、私も知っているフリースクールスタッフ2人が
「何をしているの?」
とニコニコして顔をのぞかせた。
「良かったら、一緒にいかが?」
と誘ってから、娘がイヤかもしれないと内心慌てて、娘の顔を見たが、息子もいたせいか大丈夫そう。
私たち家族3人と、フリースクールスタッフ2人の計5人となった絵しりとりは、ワイワイと盛り上がった。
絵しりとりが終わると、間髪入れずに、絵しりとりを一緒にしていたフリースクールスタッフがボードゲームを持ってくると、参加人数は更に増えた。
娘も私も、そのまま持ってきたボードゲームに参加。
また次のボードゲームを誰かが持ってきて、ゲームを説明してくれる。
気づくと、最初に絵しりとりを一緒にしていたスタッフ2人も、息子もおらず、周りは今回参加している名前も顔も分からない若い子が5〜6人。
メンバーやゲームが変わっても、分からないゲームには、懇切丁寧にゲームを知っている子が必ず説明してくれる。
どんどん変わるメンバーと、私と娘はいろいろなボードゲームを、日付が変わる頃までし続けた。
まだまだ続けるという彼らに、手を振って、さてと立ち上がり大広間を見渡すと、あちこちのテーブルでゲームに興じる人、それを見学する人。
向こうでは、歌を歌う人に、それに手拍子をする人も。
寝転んで、1人でゲームをする人、車座で話しが盛り上がっているところも。
「あ〜足が痺れちゃったよぉ~」
と、大広間の隅で、足をさする娘の顔は、宿に着いたときより明るかった。
この行事に来ている、知り合いの保護者が
「ウチの子、この宿泊が緊張するって、朝は泣いていたのよ。ドタキャンかと思ったわ」
と、夕食前に打ち明けてくれた。
その泣いていた子も、大広間の向こう側で我が息子と一緒になって、笑っている。
ここにいる全員が、不登校や引きこもりの経験や関わりがあり、社会では『生きづらい』『繊細過ぎる』とはじかれた部類のはずが、こうも盛り上がっている。
ここは息がしやすいようだ。
私には引きこもっていただけに思えた過去2回も、娘にとっては息がしやすかったのだろうから、来たのだな。
分かって、腑に落ちて、私はその夜は自宅と同じようによく眠れたのだった。