その朝も、息子 6才 は「幼稚園に行きたくない」と口をとがらせていた。
そんなときの母の返しは決まっている。
「じゃあ、お母さんが代わりに幼稚園行こう~っと」
「きみは、お母さんの代わりにお仕事よろしく~!」
1人ぼっちはイヤな6才は「ヤダ~!」となって、そんなことを繰り返しながら幼稚園の門に到着。
というのを、毎朝毎朝繰り返している。
その日は、幼稚園がお弁当持参の日だった。
「今日は、幼稚園にお弁当を持っていかなきゃ!きみが行かないなら、お母さんのお弁当作って!」
当然「できない!」「イヤだ!」と言うと思ったら「わかった!作るよ!」と予想外の返事。
「お弁当の入れ物どこ?」ムスッとしながら尋ねるので、いつも常備菜をいれている保存容器をだす。
朝食の残りもの数種類を、そのまま詰めようとするので 弁当用のシリコンカップも出して「ここにおかずを詰めたら?」とアドバイス。
「お~!これはオレの弁当に入っているのと同じ!これは使えるぞ!」
息子、乗り気になってきた。
「お母さん、何色のカップがいい?」(任せるよ~)
「お母さん、嫌いなお野菜ある?」(ない。任せるよ~)
食べる人の意向を聞いてくれる、お弁当屋さん。
見ていた姉7才も、弟の様子が気になって手伝い始める。
「弁当に朝食の残りを入れる」ことに懸命な、姉弟のお弁当屋さん。
しかしながら、入れるおかずは 悲しいかな少ない。
当然ながら、弁当箱がスカスカ。
冷蔵庫に 調理せずに、すぐに弁当箱に入れられる食べ物はない。
さて、どうしたものか。
姉弟 顔をよせあい、弁当箱を眺める。
そのうち、姉が「冷凍庫のソーセージを入れよう!」とアイディアを出し 弟も賛成。
冷凍庫のカチコチに凍ったソーセージを、レンジであたためる。
どうやら、ソーセージでタコの型を作りたい様子。
でも、温めただけのソーセージは タコの型にはならない。
アドバイスしようとしたら、7才姉がソーセージをナイフで半分に切って 100均のプラスチックのピックを刺した。
タコの型にしたソーセージの上の部分に、いつも ピックを刺すのは私のやり方。それを真似したのだ。タコの型にはなっていないけれど。
そのピックの刺さったソーセージを、何本も何本も 弁当箱の空いている部分に詰め込んだ。
それが、上の写真。
そして、下が翌日 7才姉が また作ってくれた お弁当。
さて、これが 母に作る 最後の弁当にならねばいいがなぁ。