10年くらい前に住んでいた場所を、家族で電車で通った。
そのとき住んでいた家が見えた。
夫は「家はあれだろ?」と間違えた方向を指差し 指摘したら「そうだっけ?」と、すぐ手元のゲームに夢中になった。
子どもたちには 知らないとか覚えていない場所で、てんで興味がない。
近くに大きな川があって。
その光景が大好きで。
朝、昼、夕方、夜、真夜中。川は毎日違って。
生まれたばかりの、初めての子どもを抱きながら いつも いつも 川を見ていた。
そのあと、引っ越しても 時々 その風景を思い出すと 幸せになった。
10年ぶりに、車窓からチラリと見えた風景は変わっていなかった。
川は、私の頭のなかのと同じだった。
嬉しかった。
でも、共有できる人がいなくて 寂しかった。
記憶の残り具合は、人それぞれで。
それでいいのだと、そういうものだと分かっている。
いるのだが、