誰にも言ったことはないし、相手にも言ったことはないが 私と2つ下の妹は理想のコンビだと思う。
2人姉妹の私たちは、小さい時こそ喧嘩はよくしたが 思春期に入ってからはしなくなった。
今は、住んでいるところも離れている。
お互いの誕生日にちょっとした贈り物をする以外、携帯などでのやりとりは ほぼない。
会うのは年に1~2度、実家近くのファミレスで2人で酒を呑む。
お互い、それを楽しみにしている。
本当は気の利いた居酒屋が良いが 子どもを寝かしつけてから行くので近い方が良かろうということだ。
2人とも酒好きだが、場所にも飲み物にもそこまでのこだわりはない。
それより話がしたいのだ。
話のとっかかりは、いつも「最近、どんなドラマみてるの?」
特段、ドラマが好きというわけではないが 芸能人の話はとっかかりにはいい。
「あのドラマ面白かったけどなぁ。イマイチだった?どこらへんが?」
「へえ、あの俳優さんってあのCMに出てた人?最近うれてるねぇ」
「ちょっと前公開されていた映画にもでてたよ」
「え~アレみたの?いいなぁ。どうだった?」
他愛もない話から、相手の生活も何となく見えてくる。
「ドラマってライブでみられるの?見られない?」
「週末にまとめてみるの?」
「仕事忙しいの?」
「子育て大変?」
そうやって、少しずつお互い探りながら 相手の心の中に入っていく。
仲良しだが「親しき中にも礼儀あり」という暗黙の了解が、私たちにはある。
相手を否定はしない。
女が愚痴を言うとき、アドバイスが欲しいのではない。
聞いてほしいだけなのだ。
聞いて「大丈夫だ」「あなたは間違っていない」と共感が欲しいだけなのだ。
そうやって徒歩範囲のファミレスを1~2件はしごする。
気分を変えて、話の続きをしたり 話題をがらりと変えたりしながら0時ころまで呑む。
お互い、若い時は よく週末にあちこちの居酒屋で飲んだ。
赤ちょうちんの店、おしゃれなお店、ちょっと入るのがためらわれるようなお店も、2人でなら「よし!」と気合を入れて踏み込んだっけ。
そして昔も今も「最近、ドラマ何見てるの?」から始まり、最後は決まって「お互い、仲良くしようね」で終わる。
私たちの両親はどちらも、兄弟仲が悪かった為である。
理想のコンビは、いつも一緒にいるわけではないし、相手の何もかもを知っているわけではないし 多少の気遣いも必要。
でも、会うことがいつも最も楽しみな相手だと私は思う。
次に妹と会うのは春の頃だ。